印東太郎賞

印東太郎賞とは

印東太郎賞は慶應義塾が、そして我が国が世界に誇る数理心理学者・故印東太郎博士を記念して、隔年で授与をおこなっております。
印東太郎博士は慶應義塾大学卒業後、慶應義塾で長く教鞭を取られた後、アメリカ合衆国カリフォルニア大学アーヴァイン校に移られ、長く心理学研究の第一線で活躍されました。2007年のご逝去の後、ご遺志に従って慶應義塾大学心理学研究室に指定寄付を頂きました。使途について研究室と関係者で相談をかさね、先生の業績を顕彰するとともに心理学関連の若手研究者を育成することを目的としてこの賞を2010年に設立いたしました。
受賞者の決定は、印東先生と縁の深い日本色彩学会、日本行動計量学会、日本基礎心理学会、日本認知心理学会、慶應義塾大学心理学研究室から候補者の推薦を受け、印東太郎賞選考委員会で選考を行うという形をとっています。

これまでの受賞者

各受賞者の情報は受賞された当時のものです。

第1回(2010):溝上陽子 氏(千葉大学)

様々な環境における視覚と視環境の相互関係を主たる研究テーマとされ、特に環境における色分布の測定と心理実験による視覚特性評価を結びつける研究を行っておられます。これらの研究成果は人間の特性に適した画像・環境の研究開発技術に貢献することが期待されています。
推薦者:日本色彩学会

第2回(2012):星野崇宏 氏(名古屋大学)

計量心理学、統計科学とそのマーケティングサイエンス、行動経済学への応用を行っておられる気鋭の研究者です。方法論の研究としては因子分析モデルや項目反応理論、選択バイアス、離散選択モデルの研究を中心に活躍しておられ、欧米の研究者からも注目されています。加えて優れたアイディアと協調性から認知心理学、言語脳科学、視覚心理学、教育評価、パーソナリティ心理学など様々な共同研究の中心的存在として活躍しておられます。
推薦者:日本行動計量学会

第3回(2014):河原純一郎 氏(中京大学)

基礎心理学、認知行動科学を専門とし、得られた知見の産業場面への展開を行っておられる気鋭の研究者です。行動や生化学指標にもとづく実験法を用いて、注意記憶、顔認知、魅力評価、ストレスの研究を中心に活躍しておられます。特に、個人々々のもつ注意についての能力感(メタ注意)と現実のギャップを際立たせる、独創的な手法をもちいた研究成果は国内外の研究者の注目を集めています。
推薦者:日本基礎心理学会

第4回(2016):本田秀仁 氏(東京大学)

認知心理学・認知科学およびその関連分野で精力的に研究を行っておられます。専門は意思決定科学であり、人間の判断・推論・意思決定の認知プロセス関する研究を心理学的アプローチにより行っておられます。特に、行動実験・認知モデリングアプローチを中心とする理論・実証研究を行って優れた業績を挙げている点は、氏の研究の理論・実証が大変優れたものであることの証左と考えられ、若手研究者の代表として高次認知研究を牽引していく存在になられることが期待されています。
推薦者:日本認知心理学会

第5回(2018):神前裕 氏(早稲田大学)

学習心理学を中核とし、神経科学的手法を用いた研究を精力的に展開されています。その研究は一貫して動物を対象とし、様々な行動の変容過程を連合学習理論の枠組み落としこむことで、定量的な記述にとどまらない理論的な理解を与えるものであり、実験心理学の王道とも言えるものです。近年では、従来の連合学習研究ではあまり対象とされてこなかった社会認知や遺伝子改変動物とその内分泌操作などへ研究対象と手法を広げられ、学習理論と神経科学の手法を融合した独自のスタイルを構築されつつあります。
推薦者:慶應義塾大学心理学研究室