活動内容

ゼミは学部生と院生用にそれぞれ週に一回あります。学部生のゼミは2時限からなり、1時限では3年生が毎年決められた行動分析や学習心理学の洋書を輪読しています。 現在までに読んだ教科書としてはMazur著の「Learning and Behavior」があります。これは非常に簡明な英語で学習心理学を解説したもので、勉強を始めたばかりの初学者から、大学院の受験にまで幅広く使えるすぐれものです。 他にはCatania and Hineline編の「Variations and Selections」を読みました。これはJournal of the Experimental Analysis of Behaviorという実験的行動分析の雑誌に掲載された書評ばかりを集めた本で、様々な分野が広い範囲にわたって取り扱われているところが特徴です。 もう1時限では4年生が各自、卒業論文と関連した実験論文を発表します。

院生のゼミは1時限で主に洋書を各自がレジュメを用意して発表します。どの洋書を読むかはみんなで相談して決めます。

現在まで、

  • 「Stevens' handbook of experimental psychology Volume 2」の第2章でBen A. Williams著のReinforcement, choice, and response strength.
  • Lea,Tarpy, and Webley共著「The individual in the economy」
  • Catania and Harnad編「The selection of behavior」
  • W. O'Donohue編「Learning and behavior therapy」
    などを読んできました。

行動分析について

私たちのゼミでは行動分析を研究しています。 行動分析 とは、米国の心理学者B・F・スキナーが創始した心理学の一分野です。これはヒトを含んだ動物がどうしてそのように行動するのかという原因を人間のなかに求めず、環境のなかに同定しようとします。一方、多くの心理学は個体の行動の原因を意識や感情といった個体の眼に見えない内部の出来事に求めようとしてきました。行動分析ではそれら意識や感情でさえも行動の一種であり、眼に見える行動を分析するのと同じ手法で研究することができると考えています。 行動分析は研究対象によっていくつか分けられます。主に動物を用いた基礎実験に基づいて行動の法則を解き明かしたいと考えている「実験的行動分析」や、基礎実験で得られた成果を利用し、それに人間特有の環境と行動との関係をふまえた上で例えば障害を持った人々の問題行動の改善を援助したりする「応用行動分析」などがあります。 私たちのゼミでは被験体にハトやラットを用いた実験的行動分析を行っています。

これまでの研究活動

  • 行動経済学
    ミクロ経済学における需要供給曲線分析や無差別曲線分析を行動分析に取り入れたものです。行動の原理を強化の最大化と考えたときに予測される行動と実際の行動とを比較したり、今までにない環境や行動を表す経済的な指標を用いて、分析を進めます。
  • 行動ダイナミクス
    行動ダイナミクスの一分野である「行動モメンタム」について研究が行われています。この研究ではある強化スケジュールを使って個体の行動を維持し、次にその行動を減少させるような実験的操作を加えます。そのような環境の変化によって行動が変容するときの「変化抵抗」を測定することがこの研究の主な課題です。セールスポイントは、これまで反応率のみによって測定されてきた反応強度の測度として、新たに反応の変化抵抗を取り上げた点です。
  • 選択行動
    複数の強化スケジュールが同時にはたらいている状況での選択行動が研究されています。最近では特に複数の選択肢から成り立つ選択の組間の選択、いわゆる「メタ」選択について研究しています。例えば複数ある同一強化スケジュールのうちの1つを自由に選ぶことができる自由選択と、そのうちの1つしか選択を許されない強制選択との間で、被験体はどちらを好むかということです。
  • ゲーム理論
    現在、予測ゲーム課題という実験パラダイムの下での動物や人での研究を行っています。例えば2つの選択肢のそれぞれが2種類ずつの結果をもつような実験場面を設定し、それらの結果を確率的に出現させた環境を準備したり、ゲーム理論でよく用いられるようなジレンマを伴った利得行列やシミュレーションで研究されてきた方略にしたがって強化子を供給する環境を準備した場合の行動を研究しています。



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